トップを飾る酉島伝法「もふとん」は、もふもふしたふとんの話—ではなく、もふもふしたふとんのような生き物“膚団(ふとん)”の話。つづく吉羽善「或ルチュパカブラ」は山羊の血を吸うという未確認生物(UMA)チュパカブラの話ではなく——と思ったらやっぱりチュパカブラの話ですが、私たちが知るチュパカブラとはちょっと違うかも。豚が絶滅した未来の台湾を舞台にした溝渕久美子「神の豚」にはそこに存在するはずのない豚が出てきます。
“へんないきもの”シリーズはまだまだ続き、太平洋戦争末期の北ボルネオ戦線に従軍した人間(考えてみればこれがいちばん“へんないきもの”かも)を描く高木ケイ「進化し損ねた猿たち」にはボルネオ・オランウータンが登場。異国つながりの津原泰水「カタル、ハナル、キユ」はハナル国の伝統音楽イムを核にした異文化SFですが、こちらにも�梭゚猴(ラヴェンダーモンキー)呼ばれる架空のサルが出てきて、重要な役割を果たす。感染症でつながる十三不塔「絶笑世界」では、意外な流行病の意外な特効薬(?)が発見される。
円城塔「墓の書」は作中人物のお墓について論文スタイルで語り、“異常論文”の極北とも言うべき鈴木一平+山本浩貴(いぬのせなか座)「無断と土」では、架空のVRホラーゲームをめぐる怪奇論文というか論文怪談が展開される。第3回百合文芸小説コンテストSFマガジン賞受賞の坂崎かおる「電信柱より」は生物と無生物の境を超えた愛を描き、<コミック百合姫>の表紙に連載された伴名練「百年文通」は百年の時を超えた愛を描く。
以上、二〇二一年の日本が誇る短編SFのベストテン。ごゆるりとお楽しみください。
——大森望「序」より
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