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最恐賞「いちゃりばちょーでー」閼伽井尻

 大学生三人が南へ旅行したときのこと。
 船着場へ行くと次の便までやや余裕があった。簡素な待合所の壁には、これから渡る島は古くから神の島として畏敬されており、行き来の際は砂粒ひとつとして持ち去ってはならないという注意書きが、目立つ字でそこかしこに掲げてある。
 待合所に退屈した三人は表で海を眺めることにした。
 そこへ原付に乗った老人がやってきた。日に焼けた皺くちゃ顔を人懐こく崩し「どこから来たの?」「学生さん?」などと声をかけてくる。三人が快く応じると、老人は手にしたレジ袋を差し出してきた。
 見ると、モナカアイスが二つ入っている。
「三人で食べて。二つしかないけど」
 遠慮すると、老人は「いちゃりばちょーでー」と言い、その方言の意味を教えてくれた。三人はお礼を述べ、アイスをわけあった。
 そこへまた原付の老人があらわれた。先の老人と合流すると、彼らは連れ立って原付に乗り去っていった。待ち合わせをしていたらしい。きっと二人で食べるつもりでアイスを用意したのだろう。それを偶然居合わせた観光客にくれるとはなんと人の好い。感服していると船の時間になった。
 島に渡り露天のレンタサイクル屋で自転車を選んでいると、そこへ一台の原付がやってきた。
 この話を最初に聞かせてくれたAさんは、一瞬先ほどの老人が来たのかと思ったそうだ。よく似ているがこの土地の人にありがちな顔といえば、そうかもしれない。老人はにこにこしつつも無言でAさんにレジ袋を渡すと、原付に乗ってあっというまに島の奥へと去っていった。
 袋の中身は先ほどと同じモナカアイス、ひとつだった。三人は訝りながらもそれを三等分し、食べたという。よくわからないが計三つのアイスを三人で食べたので、Aさんは納得してしまったらしい。
 一方Bさんによると二度目に手渡されたのは確かにモナカアイスだったが、それはアイスを食べ終えた後のゴミ屑だったそうだ。捻り潰された包みは溶けたアイスでべとべと汚れており、黒々とした蟻が無数にたかっていたという。
 Cさんからも話を聞きたいが、果たせていない。Cさんは旅行後二人と疎遠になってしまい、大学にも全く姿を見せなくなってしまったのだ。疎遠になった理由は、アイスのゴミを神の島から持ち帰るか否かで揉めたからだと、ここは二人の意見は一致している。Cさんは「ゴミは持ち帰って捨てるべき」と強く主張し、きちんと実行したそうだ。

総評コメント

 第4回のお題は「島」に纏わる怖い話。日本国内は北から南まで、海外も中国、フィジー、東南アジアと様々な地域の島怪談が集まりました。具体的な島名をあげるている・いないは評価の対象にはしておりません。島という隔離された空間はある種のロマンであり、異界を覗くような昂揚感があります。島には独特の文化・風習が根付いていることも多く、色々な意味で興味深いわけですが、そこに怪という要素が絡んでくるとさらに異世界感が増してきます。
 最恐賞は一度出会えば皆兄弟の意の「いちゃりばちょーでー」。同じような人物との複数遭遇、体験者たちの記憶の齟齬、因果の匂う失踪と、種類の違う怪現象が続く展開に妙がありました。佳作の「えにずぁさぁ」は瀬戸内海独特の風土が面白く、怪異としては地味目ながら強い印象を残しました。「よそ者」は移住者の体験談。怪現象の描写が優れており、余韻が残る結びも良かったと思います。「落ちこぼれの真心」は怪談というよりエッセイに近い作品でしたが、人物を丁寧に描いており、怪異以上に心に残りました。そのほかにも秀作が多く、沖縄の悲劇を扱った「うかーさん」、テレビと島が絡んだ斬新な作品「戦場の島のプリン」、南極周辺の島から持ち帰ったある物に纏わる怪異「記念品」、神の棲まう中国の島を舞台にした「夜の神様」、八丈島の史実に基づく硬派な作品「無明」が最終選考に残りました。来月はいよいよお盆の季節、皆さまの力作お待ちしております。

毎月開催!プロアマ不問!
怪談最恐戦マンスリーコンテスト

毎月出される「お題」に沿った実話怪談を書いて投稿してください。
ご自分の体験でも、人から聞いた話でも構いません。
翌月、最恐だった作品を表彰、HPに作品を掲載いたします。
さらに、4月〜10月の最恐作品から最優秀作品を選び11月24日開催の【稲川淳二の怪談冬フェス〜幽宴〜】にて表彰致します。
奮ってご参加ください。

フェス詳細はこちら

稲川淳二の怪談冬フェス

【第5回・募集概要】
お題:猫の怖い話

原稿:1,000字以内の、未発表の実話怪談。
締切:2018年8月20日24時
結果発表:2018年8月29日
☆最恐賞1名:Amazonギフト3000円を贈呈。
       後日、文庫化のチャンスあり。

  佳作3名:ご希望の弊社恐怖文庫1冊、贈呈。

応募方法:下記「応募フォーム」またはメールにて受け付けます。
フォーム内の項目「メールアドレス」「ペンネーム」「本名」「作品タイトル」 を記入の上、「作品本文(1,000字以内)」にて原稿ご応募ください。


メールの場合は、件名に【怪談最恐戦マンスリーコンテスト7月応募作品】と入力。 本文に、「タイトル」「ペンネーム」「本名」「メールアドレス」を記入の上、原稿を直接貼り付けてご応募ください。

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