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最恐賞「階段」春南 灯

 かつて、夫の祖父母が住んでいた空家に、夫婦で引越す事になった京子さんは、荷物を入れる準備をする為、ひとりで空家を訪れた。
 築五十年になる古い平屋だが、二人で住むには充分な広さだ。
 鍵を開け中に入ると、玄関からのびる薄暗い廊下の突き当たりに、大きな棚が見えた。
 近付いてみると、棚の裏からうっすらと光が漏れている。
 中身のない棚は軽く、慎重に階段脇へ除けると、埃の積もった階段が露わになった。
 踊り場には、採光と換気の為だろうか、小さな窓が設けられており、暗い階段に光が注がれている。

 ――ここも掃除しないと……。

 階段を数段上がったところで、何かが額に当たり、バランスを崩して階段から落ちてしまった。
 痛む臀部を擦りながら、階段を見上げると、白っぽい「つま先」が、ぷらんと宙に浮いている。
 その時、ポケットの中でスマホが鳴り響き、一瞬、目を逸らしている間に、それは消えてしまった。

 なんとなくだが、階段は「塞いで」あったのだと察した京子さんは、再び棚を動かして階段を塞いだ。

 帰宅した夫にこの話をしたが、この階段の存在を知らないという。
 翌朝、夫と見に行ったが、棚をよけても壁があるだけで、階段などどこにも無かった。

 京子さんは、その後予定通りこの家に引越し、現在も住んでいる。
 棚は、なんとなく動かさないほうが良いような気がして、そのままにしてあるそうだ。

総評コメント

第2回のお題は、「家」に纏わる怖い話。廃屋から新築マンションまで様々な怪が寄せられましたが、〈子供の頃の思い出〉〈昔、近所にあった奇妙な家〉をテーマとする作品がかなり多く、改めて怪談の魅力の一つにノスタルジーがあることを感じさせられました。最恐賞「階段」は不思議系の作品。怪に接した体験者が悲鳴をあげれば恐怖系に傾きますが、ここでは淡々と怪を受け止めておりそれが落ち着いた味わいに仕上がっていたと思います。佳作「首護る者―くびまもるもの―」は構成が秀逸で、冒頭から引き込まれました。おばあさんの外見を子供の言葉でもう少し詳しく説明すると、恐怖とリアリティに厚みが出たと思います。「虫の知らせ」は後半のエピソードが興味深く、もう少し詳しく読みたくなりました。「安全な自宅」は類話がなく、今回もっとも新鮮さを感じた作品。何者かが実家から出て行けないようにしているのでは…?という考察をもう少しだけ匂わせると読者も一定のカタルシスを得られたと思います。

毎月開催!プロアマ不問!
怪談最恐戦マンスリーコンテスト

毎月出される「お題」に沿った実話怪談を書いて投稿してください。
ご自分の体験でも、人から聞いた話でも構いません。
翌月、最恐だった作品を表彰、HPに作品を掲載いたします。
さらに、4月〜10月の最恐作品から最優秀作品を選び11月24日開催の【稲川淳二の怪談冬フェス〜幽宴〜】にて表彰致します。
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稲川淳二の怪談冬フェス

【第3回・募集概要】
お題:京都に纏わる怖い話

原稿:1,000字以内の、未発表の実話怪談。
締切:2018年6月20日24時
結果発表:2018年6月29日
☆最恐賞1名:Amazonギフト3000円を贈呈。
       後日、文庫化のチャンスあり。

  佳作3名:ご希望の弊社恐怖文庫1冊、贈呈。

応募方法:下記「応募フォーム」にて受け付けます。
フォーム内の項目「メールアドレス」「ペンネーム」「本名」「作品タイトル」 を記入の上、「作品本文(1,000字以内)」にて原稿ご応募ください。

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